グッピーを買うのだ〜!
こいつはなんだ!
 翔くんは、ある日、近所の熱帯魚屋さんで、こーんなさかなが泳いでるのを見ました。へーんなの。さかなのくせしてピンクでやんの。

 でも、一緒に行った尚ちゃんは、かわいいって言った。翔くんはひそかに尚ちゃんを好いとるばい、迷わずカウンターでハナクソほじってたおやじに、「おやじぃ!こいつばくれ!」と叫んだですたい。

でも、おやじは、指を鼻に突っ込んだままこう言ったんだ。
「ぼくちゃん、グッピー飼ってるん?」

ちょこざいなおやじめっ!んなもん飼っとらんばい!
「グッピーてなんだっ」翔くんはおやじに言い返した。すると、おやじは、鼻の穴を膨らませ、ニタァと笑ったではないかっ。

おやじのデカい顔が、更に倍に膨れ上がったように感じた。

「そんなんじゃ売れないなぁ」

ガーン!翔くんの頬を汗が伝った。
厨房には売れないのかッ!

「なんでだ!ぼくがカッコいいからイヤがらせかっ!それともツール使いの厨房だからってナメてるのかっ!」
翔くんは、尚ちゃんを後ろに下がらせながら、必死で守った。でも、なにから守ったのかよく分からなかった。

「そいつが欲しきゃ、最初にこれを買うんだな」
おやじは、足元からホコリまみれの小さな水槽を取り出してカウンターに置いた。翔くんは、クモが巣を張ってるんじゃないかと思った。

「今はこれだけ買って、準備してから一週間後に来い!さかなはとっておいてやろう」
おやじの顔が店いっぱいに広がったような圧力を感じ、翔くんは、後ずさりしながらサイフを取り出していた・・・。でも3200円しか入って無かった。

脂汗をたらしながら、それでも翔くんは、せいいっぱいの虚勢を張り、叫んだ!
「・・・い、いくら払えば良いのですか

「8000円」
勝ち誇ったおやじは、静かに言い放った。

「はっ・・・はっせんえん・・」
尚ちゃんが倒れそうになったので、翔くんは、あわてて抱きとめた。へっへ。抱いたぜ。心の片隅で、翔くんのゴノポジュウムがうずいた。

「おやじ、3200円しかねェぜ!」
「じゃそれでいい」
あっさり引き下がるおやじ。

「はい、これ、水槽とライトと底砂3Kgね。濾過器とエアポンプはセットにして、ビニルチューブとカルキ抜きはおまけしとくから無くなったら買えよ・・」

急にあれこれ説明を始めたおやじを無視して、翔くんは尚ちゃんの横顔をみつめていた。
尚ちゃんは、もう落ち着いたようすだった。

翔くんと尚ちゃんは、おやじの話が終わると、3200円置いて、逃げるように立ち去った。なぜかおやじは笑顔で見送ってくれた。

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